マーク金井blog

2013年03月28日なぜ、アマチュアは練習しても上手くなれないのか?

3月26日のブログで「ゴルフ雑誌を読んでも上手くなれない理由」を書きました。今日は練習しても上手くなれない理由について、マーク金井なりの理由を書いて見たいと思います。

・運動神経が鈍い
・センスが無い
・才能が無い
・自分はゴルフに向いていない

等々、多くのゴルファーは上手くなれない理由を上げるでしょう。このブログを読んでいる皆さんも、一度や二度は(いやそれ以上かも)、こんなことを思い浮かべているのではないでしょうか?

確かに、ゴルフが上手くなるのは容易ではありません。ピアノやギターを弾けるようになること、スキーやスノボを滑れるようになることと同じぐらいの努力(練習)は必要です。クラブの進化とともにドライバーやアイアンの飛距離は格段に伸びてきましたが、スコアが飛躍的に良くなっていません。ある調査によると100をコンスタントに切れるアマチュアは4割以下。シングルになれるアマチュアは5%にも満たないそうです。週末の練習場に行けば待ち時間ができるほど混んでいるにもかかわらず、アマチュアゴルファーの腕前は30年前も現在も、ほとんど変わっていません。

では、なぜアマチュアは練習しても上手くなれないのか?

かつてのブログで、ゴルフ上達を自転車に乗ることに例えました。自転車は一度乗れてしまうと、練習しなくても、何年も乗らなくても乗れてしまいますが、ゴルフはそうは問屋が卸してくれません。乗れたと思った次の瞬間、全然乗れないということが多々あります。こういうアマチュアの人達のことを、「自転車に乗れているようで、実は自転車に全然乗れてない」と述べました。そして、自転車に乗れているかどうかの判別法、判別ドリルをブログで紹介しました。

では、なぜアマチュアは自転車に乗れないのか?

いくつか理由はありますが、その最たるものは「ナイスショットの呪い」でしょう。

プロ野球チーム楽天イーグルスの元監督野村さんの有名な言葉に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがあります。これは成功した理由は言葉で説明できないことが多いが、失敗した原因は分析が可能だという意味です。

ゴルフにおける成功は「ナイスショット」。練習場で一生懸命ボールを打っているアマチュアの大半は、ミスショットの分析が非常に甘く、ナイスショットを打つと「これで良いのだ」と分析しがち。そして、ミスショットしたらすぐに次のボールを打ちます。そして、ナイスショットが出たら喜び、ミスショットが出たら、すぐに次のボールを打つ。まるでスクラッチ宝くじを買うかのように、当たりクジ(ナイスショット)を何度も引こうとしています。

察しのいい人はもうお分かりでしょう。そうです、アマチュアの大半は「ナイスショット=いいスイング」「ナイスショット=上達」だと思い、ナイスショットを増やそうとします。しかし、野村監督が言うように勝ち(ナイスショット)は根拠が無くても出ます。その典型がホールインワンでしょう。100を一度も切ったことがないアマチュアでもホールインワンを出した人はかなりの数でいます。逆に、シングルハンデの上級者でもホールインワンを一度も出したことがない人も多数います。ボクもホールインワンを初めて出したのは昨年。ゴルフを始めて35年以上経ってからやっと出ました(笑)

ナイスショットは理由が無くても打てます。アウトサイド・インのカット軌道でもインパクトで上手く調整できれば真っ直ぐ飛びます。インからあおって打ってチーピンが出るようなスイングの持ち主でも、上手く修整動作が入れば目の覚めるようなドローが出るのがゴルフ。しかし、自転車に乗れていないスイングの持ち主の場合、そのナイスショットをコースで続けては打てません。ナイスショットが偶然の産物だからです。

では、どうすれば上達できるのか?

ナイスショットではなくミスショットに向き合うことです。スライサーならスライスと向き合い、チーピン打ちの人はチーピンに向きあう。具体的に言うと、スライスした時のスイング、チーピンを打った時のスイングがどうなっているのかを自分の感覚ではなく、画像や動画でチェックする。そして、悪い動き、悪い形を修整する。スイングの善し悪しをジャッジできるドリルをやってみる。かつてのブログでは、そのひとつとして‥‥

「ひざ立ち」打ちを紹介しました。

P1020811

これは、50年以上前からある古典的なドリルですが、チーピンに悩んでいる人は、ボールをちゃんと打てないどころか、ボールの手前50センチぐらいを平気でダフります。ハンデ10ぐらいの人でも、チーピンに悩んでいる人ならば空振りしまくります。普通に打つ時と違ってごまかしがきかないからです。

ゴルフ上達に特殊な才能は求められませんし、運動神経も自転車に乗れるぐらい人ならば十分に備わっています。何年やっても100を切れない、いくら練習してもハンデ10の壁を乗り越えられない‥‥この悪いスパイラルから本当に抜け出したいのならば、ナイスショットではなくミスショットに向き合って下さい。これだけで、努力(練習)は必ず報われ、努力(練習)したら、した分だけスコアも良くなるのです。

(▼▼)b

関連過去記事 ↓自転車に乗れる 膝立ち打ちについて


2013年03月27日マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その3

カーボンシャフトはシートワインディング(シートラッピング)法とフィラメントワインディング法の2種類作り方がありますが、最近のシャフトは前者のシートワインディングがほとんどです。シートワインディングの場合、プリプレグと呼ばれる薄いカーボンシートをマンドレルと呼ばれる芯金に巻き付け、それを120度前後加熱。熱硬化処理を施します。分かりやすく言うと、陶磁器を作るような釜の中に入れて熱処理することで何層にも巻かれたカーボンシートは、ゴルフシャフトとして生まれるわけです。

シャフトを設計する上でのポイントとなるのは次の3つです。

・どんなプリプレグ(カーボンシート)を用いるのか
・プリプレグをどんな風に巻き付けるのか
・マンドレル(芯金)の形状

この3つの要素の中で、最近、シャフトメーカーが強くアピールしているのがプリプレグ(カーボンシート)の弾性率。弾性率(正確には引張弾性率)とは、外力に対する物質の変形し難さを表すもので、GPa(ギガパスカル)又はtf/mm2で表されます。20トンよりは40トン、40トンよりは70トンの方が高弾性。高弾性なほど製造が難しく、高価な源材料となります。高弾性シートを使うほど、ねじれづらいシャフトが作りやすく、フィーリングがシャープになってきます。「このシャフトは50トン高弾性シートを採用」とか「業界発の70トンシートをフルレングス」とアピールしている場合、「このシャフトは高価で貴重な材料を用いた高級シャフト」でであることを堂々と訴えているわけです。フルレングスというのは「シャフト全長」という意味で、高価な材料をふんだんに使っているということを知らしめているのです。

では、高弾性シートを使えば、
誰もが打ちやすい高性能シャフトが作れるのか?

残念ながら答えはノーです。

確かに高弾性は高価で貴重な材料です。しかし、材料だけではシャフトの性能は決まりません。料理に例えると分かりやすいでしょう。高級な食材を用いても料理人の腕前が悪かったり、調理を間違えてしまうと‥‥美味な料理になりませんよね。シャフトもしかり。材料だけでは良いシャフトには決してなりません。誤解を恐れないで言えば、安易に高弾性シートを多用してしまうと、ゴルファーに打ちづらいシャフトが出来上がってしまう恐れもあるのです。高弾性シートを使うと挙動がシャープになってトルクを抑えられますが、反面、挙動がシャープになりすぎてアマチュアゴルファーには難しいシャフトになる危険性もあります。加えて、インパクト時の振動伝達性が高まるので、芯を外して打った時、手首やひじへの負担が増してきます。

では何故、高弾性シートをアピールするシャフトが増えてきたのか?

一番の理由は売りやすいからでしょう。「高弾性」と「低弾性」というふたつの言葉があれば、シャフトに詳しくない人でも何となく、「高弾性=高性能」と関連付けられるじゃないですか。低弾性だと飛びをイメージしづらいけど、高弾性だと飛びをイメージしやすい。もちろん、メーカーも材料だけでシャフトを設計しているわけではありません。材料以外の部分でもしっかりとしたシャフト作りをしていますが、ユーザーにアピールしやすいのが「高弾性」。「高弾性カーボン」はセールスのキラーワードになるから、ことさら「高弾性」をアピールしているわけです。そしてゴルフ業界に限りませんが、シャフトも「分かりやすい商品」の方が売りやすいし、実際に売れるからです。

マーク金井、すなはちボクはシャフトを設計する場合、「高弾性シート」にあまりこだわってません。逆張りとか、シャフトメーカーと差別化したいからじゃないですよ(笑)。アマチュアゴルファーにとって本当に振りやすいシャフト、打ちやすいシャフトを作りたいというのが「設計基本理念」。これを実現するのに、今のところは「高弾性シート」は必要ないと思っているからです。ちなみに現在設計している85gのアイアン用シャフトにはわざと「低弾性シート」を用いようと考え、現在試作を繰り返しています。「低弾性」には「高弾性」にはないメリットがあって、重量を重くしやすい、フィーリングをマイルドにしやすくなるから。車に例えるならば、高弾性シートはF1マシン。低弾性シートはオートマチックのセダン。シャフトの挙動がシビア過ぎない方が、アマチュアゴルファーにとって扱いやすいし、ミート率も格段に良くなる。手首やひじへの負担も減らせるメリットがあるのです。すでに市販しているアナライズのシャフトも、弾性率にこだわらないで「扱いやすさ」「ミートのしやすさ」を最優先してカーボンシートを選択しています。シャフトおっと、そろそろ報知新聞の撮影が始まります~。

んじゃ(▼▼)b


2013年03月26日ゴルフ雑誌を読んで上手くなれるのか?

 

なんとも痛い所を突くフレーズですよね。
このフレーズの出所はこれっ!!

 

ドリル
このムック本『ドリする』の最初のページにドカ~ンと大きいな文字で、
「読んで上手くなるのか?」と強烈なメッセージを投げかけてます。ゴルフ雑誌の編集者自らが‥‥自分自身(雑誌)を否定するなんて何とも刺激ですが、読み進めていくと至極まっとうな言葉が続きます。「ゴルフは簡単に上手くならない」「明日からなんてあり得ない」等々‥‥そして、やるべきことをやれば、「劇的に上手くなる」と、担当編集者は自らの体験まじりに述べ、継続の重要性を説いて前書きを締めくくっています。

確かに、継続しなくてはどんなことも上達は望めません。ギターしかり、ピアノしかり、スキーやスノボしかり。ゴルフだって同じ。頭でいくら正しい知識を得ても、それは上達を保証するものではありません。

そしてもうひとつ理解して欲しいことがあります。この『ドリする』にも少し書かれていますが、ゴルファーの多くは「頭で理解する=できているはず」という考えて方に陥りがちです。確かに、頭で理解することは重要です。理解していないことを実践することは不可能です。しかし「理解=実践できる」ということにはならない。例えば、飛行機の操縦をイメージして下さい。操縦法は本を読んでも理解できます。完全に記憶することも可能でしょう。しかし、実際に飛行機を飛ばすとなると‥‥そうは問屋が卸してくれませんよね。実際にフライトした時には、気象状況がリアルタイムで異なりますし、何よりも空を飛ぶという未知の世界の中で不安定な飛行機を操縦をしなくてはならないからです。

ゴルフもしかり。理解することはいわば上達のためのスタートラインであって、ゴールではないのです。にも関わらず、多くのゴルファーは練習場でボールを打っている時、コースに出た時、理解したことがちゃんと出来ないと、すぐに腹を立てたり、落ち込んだり、しまいには「自分には才能がない」とか言い出します。予想外のミスを連発してワーストスコアを出した日には、「もうゴルフは止めた」なんてことを言う人もいたりします(これを言って実際に止める人は少ないですが‥‥笑)

では、どうすれば理解したことを実践できるようになるのか?

ボクがこだわっているのは「徹底的に意識しながら身体を動かすこと」と「絶えずビデオで動きをチェックすること」です。プロの中には、自然な動きでスイングしようとか、歩くように打てばいいだとか、中には「上げて下ろす」だけなんていう人もいますが、これらのアドバイスは天才系の人向けです。ゴルフに限らず、天才はイメージしただけで動けます。例えば、ギターだってプロになるような人達(天才系)は見よう見まねでいきなり弾けます。ゴルフだってプロになる人ともなれば、その多くは見よう見まねでいきなりドライバーを270ヤードぐらい飛ばしたり、見よう見まねでいきなり70台を出したりする天才系が多い。天才系の人達が発するアドバイスは間違いではないですが、普通の人がこれを真に受けて練習したら、路頭に迷うだけでしょう。

役者のトレーニングを受けた時に教わったのですが、演出家の鴻上尚史さんから天才系ではない役者は「感情だけではなく、徹底的に動きを意識した方が良い」「形から入った方が演技が自然になる」と教わりました。例えば、泣くシーン。悲しいことを思い浮かべるだけで、「泣きのシーン」が完璧になるのが天才系の役者。他方、非天才系は悲しいことだけイメージしても、観客からは泣いているように見えません。大根役者だと酷評されます。イメージだけでは感情表現がちゃんとできていないからです。非天才系は人は、人が泣く時、どんな仕草をするのかはつぶさに観察し、その仕草を徹底的に後付で演技していかなくてはならないのです。そして作り込んで作り込んだ先に、自然に泣いているように見えるのです。

ゴルフも同じです。非天才系のゴルファーは、とにかく正しい形に自分をはめ込んでいく。自分が正しいと思う感覚を一切捨て去り、正しい形に自分を押し込んでいく作業が必要不可欠です。そして、形にはめる時には、ビデオやカメラで「自分がちゃんと正しい形にはまっているか」どうかをつぶさにチェックしていく。非常に地味なことですが、「正しい型にはまる」ことが上達の基本であり近道なのです。逆に言うと、型にはまったことがない人が、自分がやりたいように練習しているのは、落語や芝居の世界で言う「型無し」。型がないから、いくら練習しても出たとこ勝負。宝くじを引くようなゴルフを延々と続けることになるのです。練習場でたくさんボールを打っても「型無し」状態から抜け出せません。そして「型無し」の人は、ナイスショットの直後に信じられないようなミスショットが出ます。

ボクは有料メルマガで「ゴルフ演劇論」というのを書きました。もうすぐ「一生役立つ上達法」というタイトルで電子書籍が出ますが、ゴルフスイングは役者が演技を会得するのと同じだと思っています。ちゃんとした「型」をまずは身に付ける。それには自分の感覚だけに頼らないことと、俯瞰の目で自分の演技(ゴルフスイング)をチェックすること。そして、練習器具やドリルを活用して正しい型を覚える。この3つをちゃんと守れば、努力は必ず報われます。。ゴルフは70歳を過ぎても楽しめるスポーツ。どうせ努力するならば、報われる努力をしましょう。

んじゃ(▼▼)b

【関連リンク】
マーク金井の電子書籍 Kindle版は、こちら
スイングの正しい型をマスターできる練習器具「ゴルフの竪琴」はこちら
過去の人気記事「自転車に乗れていないスイングとは!?」はこちら


2013年03月25日誰も教えないゴルフスイングのウソ、ホント その2

過去記事↓

「誰も教えないゴルフスイングのウソ、ホント  その1」

良いスイングと悪いスイングはどこが違うのか?

格好いいスイングと格好悪いスイングは何が違うのか?
癖のないスイングと癖があるスイングはどこが違うのか?
自然に見えるスイングと不自然なスイングは何が違うのか?

スイングを評価する場合、身体の使い方とクラブの使い方の両側面からジャッジすることが必要不可欠ですが、ボクがこだわっているのがクラブのポジション。ゴルフは道具(クラブ)の依存度が高いことを考えると、優先順位はクラブのポジションにした方が合理的だからです。

ではクラブのポジションをチェックする場合、まずどこを見れば良いのか?

前回も少し説明しましたが、いいスイングとはスイング中にシャフトの角度が極端に変わらないこと。例えば、アドレスでシャフトとクラブがおりなす角度、いわゆるライ角度が60度だったとしましょう。この場合、テークバックでもダウンスイングでも、そしてフォローでもシャフトの角度が60度前後をキープすること。シャフトプレーンに対して、シャフトがほぼ平行な状態をキープしている時間が長い人ほど、スイングの芸術点、技術点が高くなります。

例えば、タイガー・ウッズ。彼のスイングを見るとシャフトの角度がほとんど変わりません。テークバック前半、テークバック後半はもとより、一番デリケートな部分であるダウンスイング前半もシャフトはシャフトプレーンに対してほぼ平行なポジションになっています。対して、ツアープロでもスイング中に角度が大きく変わる選手が少なからずいます。このタイプのプレーヤーはゴルフは強い(上手い)ですが、スイングの芸術点、技術点は高くありません。また、このタイプのプレーヤーは、総じて調子の波が大きく出やすいです。調子を維持するにはたくさんの練習しなくてはなりません。

では、どうすればシャフトの角度(ライ角度)をキープしたままスイングできるようになるのか?

正しいテークバックの画像

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テークバックの前半では、手元とヘッドの位置関係を急激に変えないことがポイントです。ゴルフスイングは円運動と言われてますが、少なくともテークバック前半は、手元もヘッドも、飛球線に沿ってほぼ真っ直ぐ動いていないと、シャフトの角度(ライ角度)はキープできません。アマチュアの多くは円運動を誤解し、こんな感じでヘッドをインに引き、手元が身体から離れています。こうなるとシャフトの角度(ライ角度)はすぐに崩れてしまいます。

悪いテークバックの画像

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昔から、「最初の30センチは真っ直ぐ」というセオリーがありますが、これの真意(文脈)というのは、「手元とヘッドをパラレルに真っ直ぐ動かす」「シャフトの角度を変えない」ということなんです。

真っ直ぐ引くなんてやさしいと思うかも知れませんが、中々どうして、これは実際にやると簡単ではありません。インサイドに引く癖がすでについている人の場合、かなりアウトに上げるぐらいでないと手元もヘッドも真っ直ぐ動いてくれないからです。また、真っ直ぐ引くというのを誤解すると、写真のように手元が身体から離れてしまい、それに連動してヘッドが飛球線の外側に上がってしまいやすくなるからです。

P1020784

ちなみにボクはテークバックの軌道をチェックするのにゴルフの竪琴を使っています。竪琴は右手と左手を離して持つ練習器具なので、クラブを正しいポジションに導くための、両手の役割を理解しやすいからです。

ゴルフの竪琴

ゴルフの竪琴

P1020792

アドレス

P1020793

テイクバック

まずはiPhoneでもスマホでも、ガラケーでもいいですから自分のテークバックの軌道をチェックしてみて下さい。アナライズでは2000人以上のアマチュアのスイングが記録として保存されていますが、その80%以上はテークバック直後にヘッドが必要以上にインサイドに上がっています。何年やっても100を切れないとか、ハンデ10の壁を破れない人に関しては、90%以上の人がヘッドをインに引き過ぎていますし、、困ったことに本人にその自覚がまったくありません。

スイングが美しいから良いスコアは出るとは限りませんが、テークバックの前半でヘッドをインに引き過ぎると、そこから先は修整動作の連続になって、インパクトの再現性がかなり悪くなります。練習場のように同じ場所から何発も打てるならば、修整しながらでもナイスショットの数を増やせます。しかしコースのように一発勝負しかできない場合、修整動作が多い人ほどナイスショットが続かないし、ナイスショットの直後にとんでもないミスが出たりします。

次回はハーフバックのクラブのポジションについて説明しましょう。

んじゃ(▼▼)b


2013年03月24日マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その2

「マーク金井がシャフトを作る本当の理由 その1」←こちらから

どんなシャフトにリシャフトすれば、ゴルファーは飛んで曲がらないクラブを手に入れられるのか?

シャフトメーカーもボクも、これが「シャフト作り」のコンセプトになっていますが、メーカーさんとボクとでは立ち位置が大きくことなります。メーカーさんは数多く、そして効率良くシャフトを販売しなくてはなりません。このため、売れ筋商品を作ること、そして売りやすい商品を義務付けられています。言葉を変えれば「手離れ」が良いシャフトを作り、「手離れ」が悪いシャフトを作らない傾向があります。

このため、60g以上のシャフトの多くは軟らかい「R」フレックスのシャフトを作らないことが多いです。重めのシャフトは硬い方が売れる(売りやすい)。軟らかいのは売れない(売りづらい)と考えているからです。

対して、ボクはシャフト単体の性能よりも、ゴルファーのスイングに好影響が出るシャフトを作りたい。それが設計の「コンセプト」。そして売りづらくてもゴルファーの上達につながるシャフトは必要不可欠。メーカーさんが作りたがらないならば、「よっしゃ自分で作ってやろう」と思ったのです。

具体的に言うと、ウッド用、アイアン用とも重めで軟らかめのシャフトを設計しました。最初に作ったのはアイアン用。次にユーティリティ用ときて、昨年末にはFW用(ドライバーも使用可能)を作りました。硬さだけにこだわるのではなく、重量フローにもこだわり、

・アイアン用は75g
・ユーリティリティ用は70g
・FW用は65g

それぞれで重さを少しづつ変えているのは、クラブの長さがそれぞれ異なるからです。ウッド用よりもUT用が少し重く、UT用よりもアイアン用の方を少し重くする。これで重さと長さのバランスがマッチし、振りやすさが揃ってきます。

硬さについてはアイアン用は1種類。UTとFW用は2種類ラインアップしています。当初はすべて1種類だけの予定でしたが、試作で作った硬めのシャフトがすごく良かったので‥‥ハードヒッター用に(本当は自分用に)作っちゃいました(笑)

話を元に戻しましょう。ボクのシャフト作りのコンセプトはスイングが良くなることですが、そのためのポイントは重さ、硬さの他に調子があります。シャフトメーカーは、多くのユーザーに対応すべく手元調子、中調子、先調子とラインアップしています。でも、ボクは3つの調子を出すつもりは今のところありません。アナライズのオリジナルシャフトはすべて手元にしなるポイントがあり、いわゆる手元調子です。

手元調子にする理由は‥‥手元がしなった方が切り返しのタイミングが取りやすいこと、打ち急ぎのミスを減らせること、シャフトがタメを作ってくれること、そしてプレーンに沿ってクラブを下ろしやすくなることです。先調子のようにインパクトでヘッドが走る感じにはなりませんが、先端挙動が落ち着いているので入射角が安定すること、そしてミート率が良くなるメリットもあるんです。今市販しているオリジナルシャフトもミート率の良さには、かなり自信があります。

 

もちろん手元がしなりさえすれば良いわけではありません。全体の硬さに対して手元側をどれだけしならせるか。これが設計&開発の妙味。加えて‥‥

中間部分の硬さ
先端側の硬さ
シャフト全体をどれぐらいしなせるか
シャフトのしなり戻りのスピード感
どれぐらいねじれさせるか(トルク)

こういった所をどんな風に設計するでシャフトのキャラクターはガラッと替わります。設計段階では剛性分布の数値、材料をどう配分するかにこだわって試作。そして、試作シャフトを実際にコースにて試打してフィードバック。神田には24時間打てる室内試打スタジオがありますが、シャフトを最初にテストする時は、スタジオでは絶対に打ちません。1発目は必ずコースで打ちます。それもホームコースで。オリジナルシャフトについては、必ず千葉市民ゴルフ場で1発目を打っています。

練習場(試打スタジオ)とコースではゴルファーの気分、気合いが違うからです。これはゴルフの上手下手とはまったく関係ありません。ツアープロでも練習場とコースと比較すると、コースに出た時の方がヘッドスピードが0.5~1m/s上がります。ボクの場合、ヘッドスピードはほとんど変わりませんが、まったく同じ気分にはなりません。シャフトもクラブも試打は1発目が大事です。その1発目をリラックスして打てるシチュエーションではなく、緊張したシチュエーション場所で打ちたい。そうしないと本当の性能を吟味できないからです。だから試作シャフトは‥‥何が何でも1発目はコースなのです。

今回の試打ラウンドでは、58gのドライバー用のRシャフト、それと85gのアイアン用シャフトをテストしました。

58gの試作シャフトは自分がイメージしているよりも軟らかく、シャフト全体もしなり過ぎる感じなので‥‥早速修整をリクエスト。シャフトが動き過ぎるのを修整する方法はいくつかありますが、今回はもう少し弾き感を出すために、中間部分の剛性を少し上げること、トルクを少し絞ってほしいことを開発製造担当スタッフに伝えました。

ちなみに試作第1号のスペックは、こんな感じです。

長さ45.5インチ
ヘッド重量195g
クラブ重量310.2g
バランスD2

振動数 228cpm
センターフレックス 3.26kg

45インチに換算すると振動数は230cpmぐらいでしょう。これを235cpmぐらいまでにアップすること、そしてセンターフレックスを3.5くらいまで上げることをリクエストしました。

58gのシャフト試打に使ったヘッドはテーラーメイドのグローレ。ヘッドが軽めなので鉛を貼って195調整~(▼▼)b

58gのシャフト試打に使ったヘッドはテーラーメイドのグローレ。ヘッドが軽めなので鉛を貼って195調整~(▼▼)b

もちろん、シャフトの挙動(フィーリング)は数値だけで決まるものではありません。同じ数値に仕上げても材料、製法、そして剛性分布が異なれば、まったく違うフィーリングのシャフトになります。それが分かっているから、シャフト設計時には開発製造スタッフと入念にコミュニケーションが不可欠です。アナライズのオリジナルシャフトコンポジットテクノさんで製造してもらってますが、わずかな修整も「なんでここまで分かるの」って感じで、新たな試作品が上がってきます。ボクのコミュニケーション力よりも、開発製造担当スタッフがボクの言葉の文脈、意図を汲取り、それを製品に反映させる能力が非常に優れているからなせる技です。

次回は、シャフトの調子、しなり感はどうやって設計していくのかについて、説明しましょう~。

 

んじゃ(▼▼)b